インタビュー動画をはじめ、最近で言うとユーチューバーの方々が自撮りでしゃべっているタイプの映像などでは、映像の展開によっては部分的にBGMのボリュームを上げたり下げたり、細かく調整したくなりますよね。
仮に撮影した映像をPremiereで編集していたとします。
会話やインタビューシーンでBGMを調整する手段としては、シーンが変わる前後でBGMを分割しそれぞれの音量を調整後、コンスタントゲインなどでつないだり、
シンプルにエフェクトコントロールでキーフレームを2点打つのも一般的だと思いますが、2~3分の動画ならまだしも、10分を超える尺だとかなりめんどうではないでしょうか?
そんな時におすすめしたいPremiere Pro CCの機能が「ダッキング」なんです!
カンタンにまとめると
自動で音量を調整してくれる「ダッキング」とは
ダッキングとは音楽制作などDTM用語としては以前から有名な技術です。Premiereだけに限った言葉ではないのです。
主な使われ方としては、バンドなど音楽のアンサンブルで特定の強調したい楽器が鳴った瞬間に、ほかの楽器の音量を下げたりします。
言葉の由来はボクシングの「ダッキング」でも使われているように「頭かがめる」という意味が元となっています。
コンプレッサーをサイドチェインでかけるなどといって、ベースドラムが鳴った瞬間だけエレキベースの音量を瞬間だけ抑えるといった話はまた後日にして、、
要するに映像制作でも同じことで、Premiereにおけるダッキング機能とは誰かがしゃべっているシーンではBGMの音量を下げたり、会話が終われば元の音量に「自動的に」戻してくれる機能の事なんです。
Adobe Audition CCには搭載されていた機能なんですが、今年premiereにも搭載されました。
サンプル音源を掲載しておきます。
スタートから5秒後に徐々にBGMの音量が下がり、ナレーションが際立っていくのがわかると思います。同じくナレーション終わりには徐々にBGM音量が戻っていきます。
音声編集としてはなじみ深い作業ですが、初心者の方がいざ自分で映像編集するとなると、そこまで気が回らないこともあると思います。インタビューやナレーションはインサートの合間に交互に入ったりしてややこしいですし。
以下Premiereを例にその使い方をご紹介していきます。
Premiereでダッキング処理する方法
実際の使い方を見てみましょう。非常に簡単なので是非試してみてください。
この説明で使われているソフトはPremiere Pro CC 2019です。
オーディオの準備
何はともあれダッキングの実験に使う音声を準備しましょう。
簡単なライセンスフリーBGMと、同じく人がしゃべっている音声をこちらから参考に入手してください
BGM→https://dova-s.jp/bgm/play1022.html
ナレーションサンプル→http://www.voice-pro.jp/announce/
Premiereを起動 オーディオファイルの読み込み
とりあえずPremiereを起動しましょう。シーケンス設定はデフォルトのままで構いません。
続いて先ほどフリー音源としてゲットした二つのオーディオファイルを、プロジェクトに読み込みます。
読み込めたらふたつのファイルをタイムライン上に放り込んでください。
ダッキングの変化をわかりやすくするためにBGMトラックのスタート5秒後に、ナレーショントラックを配置しました。
オーディオタブにあるダッキングを探す
続いてオーディオタブに移動してエッセンシャルサウンドを確認してください。
Premiereのオーディオ編集ウィンドウでは、音声編集に特化した機能のパネルが並んでいます。
使ってみたら案外シンプルなので、難しい調整が必要ない限りは積極的に使ってみてください。画面の右カラムに基本設定画面が表示されています。
任意のオーディオクリップに対して「会話」「ミュージック」「効果音」「環境音」の4つに設定でき、それらのシーンに見合った調整機能が与えられます。
今回はナレーションとBGMにあうジャンルをそれぞれのクリップに適用したいと思います。
まずはナレーションですが、言わずもがな人の声なのでここは「会話」をナレーションクリップに適用してみます。
するとこのように右カラムが編集画面に変わりました。
続いてBGMには「ミュージック」のジャンルを与えてみましょう。以下のような画面になると思います。
ミュージックの編集画面は会話と違って少しエフェクトが少ないですね。
しかしど真ん中に「ダッキング」のパネルがあるのがわかると思います。
エッセンシャルサウンドでクリップにミュージックを適用すればダッキングに出会えることがわかりました。
ここで今回のテーマである自動音量調整機能の設定をしていくわけですね。
ダッキングを操作して自動音量調整
実際にダッキングパネルを触っていきましょう。
まずはダッキングパネルにあるチェックボックスをクリックして機能をオンにします。
ダッキングの操作はいたってシンプルです。画面に表示されている機能を紹介すると
【ダッキングターゲット】
「会話」を選べば「会話」を適用してあるほかのすべてのクリップを基準にしてBGMにダッキングがかかる。複数選択可能。
【感度】
ダッキングが反応する感度を調節できる。会話クリップの状態に対して感度が高すぎると、雑音などで必要ないのにダッキングが反応してしまうので注意。
【低減の量】
ダッキングでどこまで音量を下げるか調整する。
【フェード】
ダッキングによる音量の変化スピードを調節できる。msは0.001秒のことなので、デフォルトの800msは0.8秒である。
つまり数値を上げるとゆっくり変化する。あとからわかるが、ダッキング適用後に変化点に打たれる2つのキーフレームの幅のことである。
とこのように辞書的に説明しましたが、触ってみればとても簡単だとわかると思います。
なにはともあれ、ダッキングパネル下の【キーフレームを生成】をクリックしてBGMクリップに適用してみましょう。すると、、、
以下の画像のようにBGMクリップに勝手にキーフレームが打たれました!
しかもナレーションクリップの前後を挟むように自動的に音量が変化するキーフレームが打たれています。ダッキングが自動的に2クリップ間の音量差を検出したのでしょう。
これがダッキング機能のすばらしい技術です。
試しにこの音声を聞いてみましょう。
何も考えずにダッキングを適用してこんなにもお手軽にナレーションを際立たせることができました。
強いて言うなら冒頭のナレーションが入る前、音量が下がる変化量が強すぎるような気がします。そんな時にちょっとだけ設定をいじってみましょう。
ダッキング微調整の例
画面のようにダッキングパネルの【低減の量】を5dB上げた-13.0dBに、【フェード】を800msから1200smにして、ふわっと変化するようにしてみました。
そしてもう一度【キーフレームを生成】をクリックすると、
このように新たに設定したキーフレームがクリップ上に反映されました。
クリップ上にグレーの台形型に表されている音量の低減量が、さきほどより少しだけ小さくなっているのがわかります。
タイムラインの拡大率が小さくてフェードの変化がわかりにくくてすみません。実際に聞いてみてください。
先ほどとは違ってマイルドなダッキングになったと思いませんか?
このようにわずかな手数で簡単にナレーションとBGMの音量調整ができるんです!
インサートとナレーションが多ければ多いほど音量調整の機会も増えてしまうので、そうなるとダッキングの恩恵は強くなっていきそうな気がします。
ミスのないダッキングのために注意すること
このように簡単にナレーションとBGMの音量調整ができるダッキングなのですが、いかんせん複数クリップの音量差を自動認識で運用しているため、元々のオーディオクリップの状態が悪いと思いもよらぬところにキーフレームを打たれることになります。
- 喋っている人の声が聞き取りやすいよう、周囲のノイズや喧騒をなるべく無くした環境で収録すること
- ノイズを拾わせないために、感度設定をギリギリまで下げること
- 動画の構成は余裕を持って!自動認識が反応しやすいようトランジションには十分な尺を取る
以上のことに注意して撮影や収録を行えば、編集時にダッキング機能がとても頼りになるはずです。
会話や発言が部分的に多く、そして全体の尺も長い、場面ごとにイメージが挿し込まれる商品紹介動画などに重宝されるのではないでしょうか?
なにはともあれ是非一度ダッキングをお試しください!
Adobe Creative Cloud コンプリート|12か月版|パッケージコード版
コメントを残す